富良野市博物館
富良野沿線の社寺参道に奉納されたバラエティ豊かで、地域色のあるユニークな石造狛犬たちを博物学視点から紹介する文化財めぐりを9月30日に開催しました。富良野神社からスタートし、島の下神社、中富良野町の弘照寺、中富良野神社、上富良野神社、旭中神社を参拝訪問し、寺社の社殿建築と10対の狛犬を見学してきました。まずは富良野神社で大宝系・岡崎型・江戸系?3対の比較的スタンダードな狛犬さんたちを観察しながら、狛犬観察の基礎基本を学習。島の下神社と弘照寺では出雲系構え型と座り型を参考に道内の石工(富良野地方か?)が彫刻した特色ある狛犬をじっくり観察しました。直下の写真は昭和15年の皇紀2600年を記念して奉納された島の下神社の記念写真(『島の下郷土誌』より)で、さらのその下が弘照寺の例です。このタイプの狛犬は知る限りでは富良野地方や芦別、さらには中頓別、西興部村等に局所的に分布しています。中富良野神社では齋藤石材(中富良野町⇒富良野市)の齋藤吉蔵が彫刻したオンリーワンの独特な表現の狛犬に拝礼。富良野地方で最もインパクトのある狛犬さんに出会い、参加者も笑顔。今回特別に太田権禰宜にご案いただき、拝殿内の陶磁製狛犬も拝観させていただきました。後半は、地元の石工・佐藤辰之助が上富良野硬石(輝石安山岩)で彫刻した上富良野神社の鏑城型と東中神社の江戸系の要素がみられる例を、観察会の最後には旭中神社の山崎型狛犬を見学できました。今回の見学会では狛犬の造形デザインと類型はもちろんのこと、石材利用や地域の石工職人と狛犬などの石造彫刻、その流通なども紹介しました。狛犬をモチーフに富良野地域の歴史を学んだ1日になりました。来年ないし再来年には、富良野市街地から占冠村までの沿線南半部の狛犬さんたちを訪ねてみたいと思います。