富良野岳登山道「七ツ滝」の命名 7月28日(シリーズ 今日は何の日)

掲載日 2021-7-28 0:00:00 | トピック: 読みもの・コラム


7月28日
富良野岳登山道「七ツ滝」の命名

 今でこそワタスゲやモウセンゴケが生育する高層湿原や、林間、沢沿いそれぞれのコースで山歩きが楽しめ、富良野岳へも続く登山道が人気の原始ヶ原散策路ですが、それまでほとんど人が入ることのなかったこの登山道を開くために探検した人々がいました。それが富良野保勝会(いまの観光協会のようなもの?)が計画した探検踏査会のメンバー、当時の日甜富良野所長の澤井梅次郎と理髪店店主の鈴木廣ら19人です。
 

 彼らは昭和8年7月28日の昼から布部川沿いに登り始め、出合った滝に「不動の滝」「錦糸の滝」などと名付けつつ進み、標高950mの地点で野営しました。この夜大雨に悩まされ、芦別岳の遭難事件などが頭をよぎり不安を感じつつも、快晴となった翌日、歩き始めて40分ほどで高山植物の彩る平坦地(後の原始ヶ原)にたどり着きます。繁茂する湿原植生を目の当たりにした一同は「一幅の南画を見る趣き…」とため息をついて見とれました。そしてこの日の昼には富良野岳頂上に達し、東には十勝平野をこえて阿寒岳を、西南は富良野盆地を見下ろし、芦別岳、夕張岳を一望に、さらには羊蹄山や駒ヶ岳までも(!)遥かに望むことができたといいます。
 

 その後、十勝岳を経て翌朝吹上温泉に到着しました。吹上温泉で出会った北海道庁長官佐上信一に「富良野町より布部川渓流沿いの富良野岳登山は絶景に恵まれ変化の多き渓流と幾多の飛瀑探勝は国立公園に指定されれば公園の真価は大いに発揮され登山の効果大なるものがあります」と説明する一幕もあったそうです。このことがその後の国立公園の指定に一役かったかも…というのは想像の世界です。

 

 この登山道は現在も富良野山岳会ほかの方々が毎年整備してくれており、特に毎年のように春先の雪解け水で橋が流されてしまう滝コースの橋は大変な労苦をはらって修復しています。また、湿原を抜ける道では登山者の歩いた道跡が削れて高層湿原が荒廃する問題も起きており、登山道の整備と湿原の保全や再生にかかる作業や費用を今後どのように担っていくかを考える岐路に立っています。

※この記事は『続・ふらのこぼれ話』(1984年 富良野市郷土研究会)P104 第15話「富良野岳探検踏査記」を元に記述しました。より詳しい話を知りたい方はこちらをお読みください(市立図書館などで借用できます)。






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