富良野市博物館
特別展「富良野原野の開拓と山手幹線用水路」の関連企画として、土地改良の歴史を物語る史跡をめぐるツアーを開催しました。最初に訪れたのは富良野盆地を一望できる小高い丘・清水山(富良野ワインハウス駐車場)。配布資料の「フラヌ原野区割図」(明治33年)と眼下の富良野盆地を比較しながら解説をスタートしました。この山は原野の用排水路整備の大工事をなしとげた兜谷徳平が当時の北海道庁長官をここに連れてきて原野を一望しながら説得した場所でもあります。ヌッカクシフラヌイ川とデポツナイ川の合流部。この周辺の直線的な水路はまさに大正期の大工事の成果です。この水路により泥炭地の排水がなされ、現在低地部一円に広がる農地が広がっていきました。元東京大学北海道演習林の井口和信さんも助っ人講師として随所で補足説明をしてくれました(この地域の開拓のかなりの部分が北大・東大の両大学を地主として進められた経緯や建造物の材の特性、自然史から見た開拓の負の側面など)。古民家ここにわは昭和2年に建てられた豪壮な農家建築で、母村(富山県)文化を継承しつつ、中廊下が設けられるなど西洋の様式も取り入れています。ご主人の山縣さんのご厚意でリノベーションされた客室を見せていただき、歴史的建造物の現在への利活用の事例も学ぶことができました。当館にも立ち寄り、短時間ですが解説を聞きながら特別展観覧し、当地の農業と土地改良の歴史の概要をおさらいしました。↓特別展の立体模型「富良野原野の水路と地形」解説映像(クリックすると動画サイトが開きます。)勇振川温水ため池。富良野盆地の南部は北部と違って比較的泥炭が浅いのですが、一方で空知川から取水する山部幹線用水が引かれるまでは水田稲作には冷たくて適さない芦別岳由来の雪解け水を用水として利用しなければならないのが悩みでした。このため池は雪解け水を温めながら利用するための仕組みです。面積は道内2番目、11面の遊水池の数は道内で最多です。明治39年に入植し本地区で初めて玉ねぎを栽培した山崎家で米や資材などを収納した倉庫。こちらも山崎さんのご厚意で、倉庫の中をじっくり見学させていただきました。多くの方のご厚意のおかげで、充実した見学会を開催することができました。皆さんに感謝を申し上げます。