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調査と事業の報告 : 10/24 変形菌調査
投稿日時: 2020-12-1 9:50:00 (210 ヒット)

今回はちょっと変わった生き物の調査を行いました。その生き物の名は「変形菌」。
変形菌は「粘菌」という名称で呼ばれた時期があるので、その方が親しみ深い方もいるかもしれません。どんな生き物かは少しずつ紹介していくことにしましょう。

朝9時30分、調査の協力者はハイランドふらの駐車場に集合しました。互いに自己紹介をした後、講師の室蘭工業大学准教授・矢島由佳先生を中心にさっそく駐車場に隣接するラベンダーの森に踏み入っていきました。ここはカラマツや落葉広葉樹の林で、足元は下生えが多く藪のようになっていますが、おかげで変形菌の観察に適しています。


さっそくカラマツの倒木の表面をのぞきこみます。見ているのはせいぜい1mmほどの小さな小さな生き物たち。


標本にするときはスクレイパーで採集し、


マッチ箱ほどのサイズの紙箱にボンドでくっつけます(クリック╱タップで拡大画像表示)。


・ケホコリ類かヌカホコリ類か


・ヒョウタンケホコリか


なお、講師は現場で可能な限り同定しているのですが、メモしきれていないものがあったり、写真とのつながりが一部不正確なため種名は断定せず表記しています(後日標本を郵送して改めて胞子から同定してもらいます)。

古い木橋も変形菌の楽園、熱心に探します。


案の定、橋の裏には┅
・アミホコリ類らしきものがいました。


・キンチャケホコリ(クリック╱タップで拡大画像表示)


お昼にさしかかった頃、場所を変えて鳥沼公園にやってきました。ここではハンノキやミズバショウの優占する湿地林を散策します。


まず見つけたのは
・乾き気味の枯れ木についたドロホコリ


・マメホコリ


マメホコリやドロホコリの仲間は子実体が1僂曚匹△蝓∧儼繕櫃涼罎任和腓屬蠅埜つけやすい仲間です。

・ハチノスケホコリ(クリック╱タップで拡大画像表示)


子実体の上部がとれて胞子が大部飛び去ってしまった後ですが、角張った穴が隣り合って蜂の巣のように見えます。これが「ハチノス」ケホコリという種名の由来です。

・ウツボホコリか



これも変形菌ですが、子実体を形成する前の変型体という時期のもの。この状態だと同定(種名を調べること)は難しいのですが、せっかくなので葉っぱに包んで乾燥しないように持ち帰り経過を見ることにしました。子実体を形成しない時期にはこのようなアメーバ的な姿となることが変形菌の最も大きな特徴です。菌類の場合は糸状体という文字通り糸が張ったような姿となります。
→ 後日、一月ほど経過した後の姿の写真を矢島先生に送付して確認したところ、変形菌の仲間ではないと判明しました。

・ヘビヌカホコリ(クリック╱タップで拡大画像表示)


・ケホコリ類か


これは「菌核」という状態の変形菌なので、乾燥させずに持ち帰ることにしました。


これは・・・ナメコ(菌類)ですね。大きさは全く違いますが、写真で見ると間違えてしまいそうです。しばし足を止めて「おいしそうだねえ」と見入りました。


午後1時を過ぎたところで最後の散策地「太陽の里・沢コース」にやって来ました。ここは芦別岳の麓の自然散策路です。トドマツ造林地跡にできた針広混交林で山部地区にあります。

ここから富良野高校科学部が合流しました。


ケホコリの仲間(クリック╱タップで拡大画像表示)

こわれる前の子実体がついています。

・ウツボホコリ類か

垂れ下がるように映える種類のようです。



ウツボホコリ類か(クリック╱タップで拡大画像表示)

中につまった胞子が半ば飛び去ってしまったため、グラスウールのような姿なっています。

ケホコリ類か


ハナハチノスケホコリか(クリック╱タップで拡大画像表示)

子実体をよく見ると先端が四つに割れたような形になっています。

★参考:図鑑「図説日本の変形菌」のハナハチノスケホコリの形態を示したページ。


ムラサキホコリ類(クリック╱タップで拡大画像表示)


日没が近づき薄暗くなって観察が難しくなってきたため、15:30ごろに博物館に戻りました。


この日は、講師に時間の許す限り教えてもらうため、食事の時間もほとんどとらずに市内の林をめぐってきました。午後になり身体がすっかり冷えていたこともあり、室内に入ってほっとひと息。・・・つく間もなく、今度は変形菌の基礎知識や探し方のコツなどを教えていただきました。


ここでは、変形菌の独特な形態について教えてもらっています。まずはアメーバのような変形体の時期と形態のはっきりした子実体をつくる時期があること、菌類(きのこ)との違い。


また、「子実体の時期には体の全てが胞子となり、軸や殻の部分は分泌物(排泄物)でできていること」、「変形体の時期には単細胞で、核をたくさん持つ多核体となっていること」が、重要な特徴であることも学びました。

変形体の種類は本当に様々。そして時期により出現する種の傾向があります。


質問の時間では林業で問題となる雪腐れ病の対応策となる可能性があるのでは・・・と研究者の間で可能性が検討されていることなどをお話しいただきました。

座学の後、残りの時間で採集したものを改めて観察しました。広げてみると、ラベンダーの森では10個ほど、鳥沼公園でも10個ほど、太陽の里では20個近くの標本が採取されていました。


正確な種の同定は顕微鏡で胞子を確認しが必要なため、標本を十分乾燥した後に矢島先生に郵送して確認します。なお、送付前に参加者のSさんと共にできる範囲で同定を行いました。その様子を下記のリンク先の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。

リンク先→10/24 変形菌調査「採集標本の詳細」

この企画は、元々一般向けの講座として計画していましたが、「春の企画がコロナウイルス感染拡大の影響で中止となったこと」及び、「講師が遠方から来られるため、下見→実施と何度も富良野に来て準備することが難しいこと」から、調査および研修会として、自然に親しむ集いと富良野市博物館の合同で実施することになりました。これを一般向け講座の準備とも位置付け、近い将来、富良野の自然に親しむ会の観察会として開催できるよう進めていこうと考えていますので、どうぞご期待ください。

この日は限られた時間で調査するため、食事や休憩の時間もけずって野外を駆け巡りました。おかげで富良野地域のの変形菌相を明らかにする第一歩を踏み出すことができたと思います。矢島先生には本当にお世話になり、同行してくれた方々も大変お疲れ様でした。



追記:後日(12月16日)に矢島先生に確認したところ、誤りが見つかりましたので、お詫びして訂正いたします。
白いアメーバ状のものは変形菌ではなかったこと、ハチノスケホコリとあるものの一部はハナハチノスケホコリや別属のケホコリ属であったことなどです。とりわけ大きな間違いは、以下の写真の部分です。これは変形菌ではありません(黒い棒のようなもののみ変形菌の残骸である可能性あり)でしたので、説明文と合わせて削除いたしました。

【以下:削除前の文面】
この写真の中の白い菌糸はカビ(=菌類:変形菌とは別物)ですが、見ているのはカビではなく先端が黄色のもの(変形菌)。この先端を子実体といい、菌類なら「きのこ」、植物なら「花」にあたる部分です。

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