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    森林学習プログラム : 東大演習林の森づくりと銘木市
    投稿日時: 2020-3-1 6:30:00 (841 ヒット)

    2月29日の北海道新聞で富良野市にある東京大学北海道演習林の取り組みが紹介されました。この記事には富良野市博物館の取り組む森林学習プログラム(東大演習林をフィールドとして富良野市内の小中学生が森林の生態や森づくりを学ぶプログラム・研修を積んだ森林学習サポーターが指導する)とも深い関係のある内容を含んでいます。


    ※クリックすると全体が見れます。

    昨年1月の森林学習サポーター研修会で私たちも同演習林の井口職員の案内のもとで銘木市を見学しました(末尾の「ふらの森の教室だよりNo.18」もご参照ください)。研修会は年間を通じて何度も開催しており、それまでは東大演習林の教員・職員から現地の森林の生態系やその森づくりのやり方を学ぶことが多いのですが、このときは切り出した木材がどうなるかという、普段の学習の先にあることを学ぶ内容でした。独特の熱気にあふれた会場の中、やはり私たちも東大演習林のマカバがとびぬけて高い値をつけていたのに、驚かされました。



    この新聞記事ではマカバの売り上げが演習林の財政を支えていることに注目していますが、長年にわたる森づくりにかけた費用や人手、研究がこれを生み出したことは忘れてはいけません。費用対効果を考えれば、より短期的なスパンで植樹と皆伐を中心とした施業の方が成立しやすく、研究林としての側面があるからこそ、人手をかけた施業形態が(かろうじて)成立しているのでしょう。



    さらに注目すべきことは、こういった施業が持続的な森林管理につながると共に、豊かな生態系の維持にも貢献していることです。施業方法をごく簡単に説明すると以下のようになります。
    ・演習林全体を「林分」という区に分ける。
    ・その年の施業することになっている区で、病気の木や大径木を切り出し、若木の成長を促進する。その基準は次のその区を施業する年(15〜20年後)には老齢で材としての価値が落ちているかどうか。(反対にいうと、材として最も価値があるタイミングで切り出す)
    ・中には一斉に皆伐して笹などを払った上で植林する区や、ほぼ手を付けない「保存林」とする区、それ以外の区も施業の間隔を15年・20年など森の状態に合わせて施業方針を設定する。更新方法も場所により、天然更新や植林、地がきの有無を使い分ける。

    こういった取り組みの結果、持続的な森林が成立すると共に、多様な動植物が生息・生育するいわゆる「自然豊かな森」ができているのです。



    基本的に東大演習林は一般の方の入林を制限してきましたが、これだけの森林の価値とその管理の難しさ(過去何度も甚大な被害を受けた山火事なども含む)を考えればもっともだと思います。それらの経緯を乗り越えて、現在「森林学習プログラム」への協力という形で、私有地である演習林の市民への開放を進めて進めていただいていることに感謝の念を禁じえません。

    冒頭にお伝えしたように、マカバの値段は高いとはいえ、かけた労力からみれば決して大きなものではありませんが、それ以上に富良野の持続的で多様な動植物が生息する森に対する勲章なのだと思います。地域の住人の皆さんには、そんな森がこの地域にあることをぜひ誇ってほしいと思います。


     
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